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【死の海域】が過去最大規模に達するおそれ、米国南部

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米国南部の海が死にかけている。ミシシッピ川の河口あたりの海は毎年「デッドゾーン(死の海域)」と呼ばれる酸欠状態になるが、科学者の予測によると、2019年は観測史上で最大規模に達するおそれがあるという。

例年、春に雨が降ると、陸地の肥料や下水に含まれる養分がミシシッピ川に流れ込む。淡水は海水よりも軽いので、河口から海に出た水は表層近くにたまって循環を妨げる。養分を多く含む淡水層では藻類が大発生し、この藻類が死んで分解される際に大量の酸素が消費される。

 そうしてできる低酸素の海では、生物たちは窒息して生きていけない。これがデッドゾーンだ。今年、メキシコ湾の大陸棚の上には、東京都の面積のおよそ10倍に当たる2万平方キロメートル以上ものデッドゾーンができると予測されている。

 

デッドゾーンの原因は1つではない

 今年のデッドゾーンが特に大きくなることについて、ラバレー氏は驚きではないと述べる。今春、米国中西部では、前例のない大雨に見舞われた地区が多く、海に流れ込む水の量が大幅に増加した。この大雨は、多くの農家に被害をもたらし、トウモロコシや大豆などを作付けできなかったところもある。

 これは同時に、畑にまかれた窒素やリンを多く含む肥料が、すべてミシシッピ川に流れ込んだということでもある。温暖化によって中西部で豪雨が増えることも予測されており、肥料の流出を防ぐのはさらに難しくなっている。

「この問題を解決する最善の方法は、大元で使う肥料を制限することです」とラバレー氏は言う。「肥料に含まれる養分がいったん川に流れ込んでしまうと、それを効果的に取り除くことはできません」

 ルイジアナ州立大学ユージン・ターナー氏は、ラバレー氏とともにデッドゾーンの広さの予測にあたっている。ターナー氏によると、管理の徹底でデッドゾーンを狭めることは可能だという。たとえば、輪作を行うことで土壌の健全性を維持し、肥料を減らす。また、作物をカバーで覆って土壌の流出を食い止めるなどだ。

 米海洋大気局でデッドゾーンについて研究している科学者のデビッド・シュレル氏は、デッドゾーンの拡大を肥料の流出のような一つの原因だけで説明するのは難しいと述べている。肥料の流出は、デッドゾーンを形成する大きな要因ではあるものの、下水や気象もデッドゾーンの大きさに影響しているという考えだ。

 米国の農業団体ファーム・ビューローのドン・パリッシュ専務理事によると、肥料の流出対策はすでに進められていると言う。農家は、精密農業や人工知能によって必要な肥料を減らす取り組みを行っている。しかし、こうした技術は費用がかさむだけでなく、習得が難しいので、すべての農家で採用するのは難しいとも言う。

「科学的に見れば、デッドゾーンを狭めることはできるでしょう。しかし、政治的にそこにたどり着けるかどうかと言えば、まだ道半ばというのが実情です」